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今日で、プリンストンにきてちょうど一年。一周年記念日だ。
記念に、しばらく滞在していたNassau Innに娘を連れていくことにした。時はちょうどクリスマス前、森に囲まれたこの街の住宅部は真っ暗になる。2時間以上もかかって漆黒の夜の道を抜けて、中心部に入り、Palmer Squareのクリスマスツリーの輝きが見えたときの、ほっとした気持ちを今でもありありと思い出す。そして、たどり着いた宿がこのNassau Innだったという訳だ。古色蒼然とした建物が、暗闇に浮び上がる。 マリオットなど、巨大チェーンの低価格帯のブランドにはInnという名前が多いから、簡素なカジュアル・ホテルを想像していた。その割りに価格がうんと高かったが、ダウンタウンにはここ一軒しかホテルがないと言われ、出発前の忙しさもあり詳しくチェックしていなかった。 しかし、これは正真正銘のInnである。設立は1756年。大学誘致のためにプリンストンにNassau Hallが立てられ、大学がこの地に移転してきたのが1756年である。それとあわせて同年、Nassau Innが設立されたのである。その後、1777年にプリンストンは独立戦争の戦場となり、この戦いでワシントンが英軍を破り、米軍有利に形勢が逆転した。 まさにコロニアル建築である。時代がかったホテルのラウンジに唸っていたら、何と、本物のNorman Rockwellがある。Rockwellは伊勢丹の赤いラッピングペーパーに使われているせいもあり、すっかり、クリスマスの絵、というイメージ。この季節にはまりすぎである。ラウンジの革張りのチェアーがこれまた真紅。Rockwell は20世紀初頭の画家だが、Nassau Innのために描いたのが、Yankee Doodleである。Yankee Doodleは独立戦争の時にアメリカ兵が歌った軍歌。何だかコロニアル時代にいきなりタイムトリップしたかの感覚で眩暈がしそうだった。Rockwellが描かれているのが、Yankee Doodle Tap Roomである。Tap Roomはパブの前身だとか。レストランとして使われているが、建築的にはイギリスのパブそのものである。丸いカウンターが置かれ、その周りにボックスシートがある。イギリスのパブはクラス別の2つのスペースがあるが、もしかしたら、このTap Roomが大衆用、上のラウンジが上級用と意識して作られたのかもしれない。 この時期、プリンストン大学関係のパーティがひっきりなしに開かれている。そう広くはないホテルにタキシードやドレス姿の男女が大挙して集まるのは壮観で、何というところにきちゃったんだろうという感じだった。今日もホテルの入り口には沢山のリモが停まり、運転手が集まってがやがやと話をしていた。このホテルの歴史からするとリモの運転手ではなく、馬丁がたむろしていた時間の方が長いし、そちらの方が断然イメージぴったりだ。昨年、初めの2日ぐらいはとても楽しかったのだが、部屋の暗さと、パーティの煩さに閉口した。レストランは、混んでいたのと重い印象だったのとで一度も食事をせずじまい。で、一度ぐらい行ってみようと思いたったわけである。 やはりはずれ。まさか日本の料亭のようにとは言わないけれども、ドイツのビアホールぐらい、せめて日本のファミレスぐらいの味の料理を出してもらえないだろうか。そうしたらもっとちょくちょく来るのに。宿泊料も高く、食事も最低。これでやっていけるのは偏に独占的立地のおかげである。 が、いろいろな規模で開催されるプリンストンの同窓会に集う老若男女の面々の屈託なく楽しそうな様子をみて、もしかしたら、これは独占の驕りと傲慢のために高価格低品質にしているのではなくて、プリンストンに忠誠をつくすためにあえてこのクオリティにとどめているのではないかと一瞬思ったのである。この雰囲気で料理が日本のファミレスだったら、有象無象のお客が集中し、キャパがパンクしてしまう。それでは、昔からのコア・カスタマーの忠誠心に答えられないではないか。まさにイギリスの田舎のパブのように、来たものに必ず場所が与えられる状態。抜けがある空間である。高価格はクラブフィー、低品質は、学生時代のノスタルジー。高所得で普段美味しいものを食べ慣れているであろう卒業生達なのだから。 って、ことはないだろうが。独占の意図せざる結果として、プリンストン御用達のクラブハウス的なスポットが、街のど真ん中に確保されているのは面白い。ニューヨークの流行のレストランが、ちょっとばかり美味しいからと高慢ちきになり、客を高回転させようと躍起なのに比べると、この古色蒼然さも捨てがたい気もしてくる。NYで皆でテーブルを囲んでいるのに食事をしている人の視界をさえぎってどんどん皿を片付けていくのは本当に浅ましい感じがするのは私が田舎モノだからだろうか? さて、1周年である。この1年で私は何を得たのだろうか。仕事が思うほど進んでいないし、英語もそんなに上達していない・・反省は改めてすることに。娘を連れての滞在で良かったことは、アメリカ社会と接する子供の目線と親の目線の2つを得たことだろうか。アメリカを理解する上で、子供の頃からどのように育てられ教育をされ社会化されるのかを少しでも体験知として知っていることは重要なことのように思う。 そして、全く予期していなかったことなのだが、アメリカの革命史と愛国心との関係に興味を持つようになった。ストレートな愛国心とは違う、東部の人間が持つ独特の誇りの感覚が少し分かるようになった。リッチな大学街プリンストンはコンサバとリベラルが不思議に同居する街である。一人の人物の中に細かい襞のように多様な価値感が織り込まれている。その集積体がどのようなポリティカルスフィアーとして捉えられるのだろうと思う。それがもう少しくっきりしたとき、自分の居場所が確定してお客様じゃなくなるような気がする。 Yankee Doodle Tap Roomでメニューを待ちながら、娘にこのホテルが独立戦争より前からあることを教えてやる。アメリカの独立の歴史について学んでいる娘は、植民地時代の人々の生活に少しづつ興味を持つようになってきた。今まで、英語がほとんどわからず、授業は全くお手上げだったのが、断片的にわかる部分ができてきた。今日は、ニュージャージー州がアメリカの3番目の州だということを教えてくれた。 思わぬことを聞かれてぐっと詰まることもある。 例えばYankee Doodle って何?Yankeeは東海岸のアメリカ人よと言っても、なぜYankeeというのかそういえば知らない。Doodleは辞書的には馬鹿という意味。語源はお手上げ。この絵は何を意味してるの?聞かれてみて、自分が知らないことを始めて知る。いつもこの傍を通り過ぎているのに。自分の専門に関係ないことは素通りする意識になっていることがよくわかる。娘に、分からないことは放っておかないですぐに調べたり聞いたりしてごらんと言っている手前、調べてみなければならないだろう。
by tigress-yuko
| 2005-12-01 00:22
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