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勝負は面白い。得意な相手、苦手な相手がいて、私は、レオ相手には勝てるのだが、彼は、そんなに弱いほうではない。突撃カシーンはまあまあ、でも、メカニックロシア少女ロレーヌには全然勝てない。相性というのがあるのである。それに加えて、最初に強いか後に強いかもある。私は、一試合の中では、最初と最後の粘りは強いが中だるみする。多くの試合をすると、始めはだめで、だんだん調子がでてきて、後半に強い。ただ、最後の方はスタミナ切れしてしまい、精神が保てなくなる。 大分、攻撃とフットワークができるようになってきたが、ディフェンスが課題として浮上してきた。突いてくる相手に合わせて剣を突き出すタイミングと長さが足りない。これで、うっかり、ミスして点を取られてしまう。 仕事とフェンシングの関係も微妙だ。一番フェンシングに気持ちが込められるのは、かなり長い間とりくんでいるのに、どこかに引っ掛かりがあって気持ちが閉塞して爆発しそうになっているときだ。貯まりきってる感じ?今日は報告書の一部を仕上げて郵便局まで送って気持ちがちょっと抜けたせいか、貯まってくるものがなかった。こんなにも精神的な要素が大きいなんて不思議なものである。精神のスポーツと言われるゆえんはこういうところにあるのだろうか、と思う。 合間に娘にせがまれて、エペのエレクトリックのブレードを貸してやり、ちょっと試合をしてやることにした。火曜日のレッスン中には、宿題をさせたり、合間合間に娘の相手をしているのだが、今日は、娘が特に煩くまとわりついてきたのである。 エレクトリックというのは、剣に電流を通してあり、剣先が相手の身体に触れると、ブーとライトが点灯する仕組みになっている。勝負の判定が簡単なので試合はエレクトリックで行われるのだ。娘はまだエレクトリックの試合をしたことがないので、このブーというのをやってみたくて仕方が無かった。 18世紀にフランスで、練習用に発展したフォイル(ラピエ)は、しなる素材で出来ているので、相手の身体に当たるとくにゃーと曲がってしまうので痛くないし、あざなんて滅多にできない。ターゲットエリアは、上半身の胴体だけだ。しかし昔のフェンシングの伝統上にあるエペは硬くて重く、相手の身体を実質突くようにできている。しかも、全身どこを狙ってもいい。優雅なフォイルに比べて、エペはワイルドなのだ。 ちがう剣を持つだけで、娘と私の身体のかかわりが全く違うことに驚いた。フォイルで遊んでいる分には娘と私はじゃれあっている感じだ。しかし、エペで娘に向かってみて、娘の身体は何と、か細くて、華奢なのだろうかと感じる。体格の差をモロに感じるゲームなのだ。でも、ゲームはゲームだと思い、娘の腕をなるべく狙わないように、身体に向けてアタックしていた。 それを見ていたサムが、「ユーコ、性格悪いなー。ハナ相手にまともに打つなんて、ひどいよ。」と声をかける。そうかな、負けてやるべきだろうか。確かに、私の剣で娘の身体を打つのは可哀想すぎる。遊びだし、打たせてやろうか、と思い、攻撃の手を休めた。すると、娘がかなりアグレッシブに私の胃や腰骨やらをずんずん突いてくる。子供は単純である。力いっぱい突き、その瞬間ライトが点灯し、ブーと音がなる快感に痺れてしまったらしい。 娘はとくに単純な性格だ。エペだったら、お母さんより強い。私はエペに向いている。と思い込んでしまったようだった。いつのまにかちょこちょことチェックのところに行き、私もエペがやりたい、と訴えたのだそうだ。 チェックがレッスンの後に、ユーコ、ハナにエペをやれとそそのかしただろ?負けてやったりしちゃ絶対だめだ。徹底的に叩いてやって、ああ、これはとても難しいとわからせないといけないんだよ。エペには、ややこしいright of the wayもないし、どこを突いてもいいから子供は単純に簡単で面白そうだと思っちゃうんだ。でも、エペは、単純そうに見えるけれど、とてもとても微妙で繊細なんだ。子供には無理なんだよ。わかんない?もうー、仕方がないなー、と怒られてしまった・・・。 フェンシングは、真剣に取り組むスポーツなのだった。
by tigress-yuko
| 2006-03-07 22:18
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